2003 09 05  

3・BEATLESとROLLING STONES

―――間違いだらけのBEATLES vs. STONESの構図―――

 ったくさー、「BEATLES 好きないい子」「STONES 好きな悪い子」って、いったい何のこっちゃ、って。そんなほんの上っ面だけ見てそれでいいの?、っていうか。大体それって“仕掛け”だったんだからさー、ダマされちゃダメだよ、みんな〜、って。
 はい、リアルタイムで知っている私がお答えします。1962年にBEATLESがデビューして、いきなりその周辺のLiverpool Sound(ま、ブリティッシュ・ロックなんだが、当時は十把一絡げでそう言った)がフィーチャーされ、STONESも続々と後発で出てきたうちのひとつだったわけ。
 大体はビートルズに右へならえで、小ぎれいなスーツに身をつつんだグッドルッキングっぽいグループが多かった(Dave Clark Five、Serchers、 Freddie & the Dreamers、Billy Fury & Dakotas、Hermanユs Hermits、etc)が、ROLLING STONESだけは異質だった。それは一度見たら忘れないほどの“顔のヘンテコさ”。それまで外国人など映画かTVでしか見たことが無い中学生にとって、ガイジンはみんなハンサムでカッコいいというイメージだったが「何だこいつらは・・・!こんなヘンな顔が、それも5人も・・・」それは一種のカルチャーショックでもあったのだった。
 ここではっきりさせやしょう。当時はBEATLESとSTONESを比べる奴なんか誰も居なかったんだよん。その歴然とした理由は、後発(STONES結成は1962〜63年)だし“音楽的実力の差”があり過ぎってわけ。“BEATLESは全部オリジナル”、“STONESは全部黒人リズム&ブルース(昔はソウル・ミュージックのことをこう言いました。以下R&Bに略)のカバー”だったんだもんね。
パフォーマンスはともかく、そのことに関しては比べる問題にもなりまへんわ。他にオリジナルがあったグループもいたが、STONESはその面妖なルックスとまあ当時のイギリスの若者がみんな好きで憧れていた黒人R&Bを徹底してやっていたのが硬派でシブい感じもして、他のグループと違う独特の雰囲気でメキメキ人気にはなりましたが。初め揃いのユニフォーム着てた頃もあったっすよ。スーツじゃなくて黒の革ベストとシャツとかだけどね、カワイイもんだ。
だからさ、まさか今の時代までこんな形で生き続けられるような、そんなにたいそうなグループじゃなかったかも。でも、それがなぜBEATLESの対抗勢力になったかというと?
頭のまわるマネージャー(今風にMDと言いいたいかも)がいたのさ、Andrew Oldhamっていうのが。まあこのままじゃストーンズはポシャると思ったんだろうね。策を練ってすんげー“ワルのイメージ”に持っていった。
時の流れも味方したというか、BEATLESは“POPアイドル”から脱皮したくて実験的な音楽や突飛な行動を始め、いったいどうなることかの不安定飛行となり、STONESの実質上のリーダーだったBrian Jonesがプールで事故死(溺死)した(ホサれたからだという話も)。かなり音楽的なことも牛耳ってファッションのセンスもよい彼が死んだのは自殺・他殺説も出て未だに謎。このAndrew Oldhamという男はそれも利用して、すげーうまいこと行っちゃったんだすな。
1969年ハイドパークでのBrian追悼コンサートで、それまでとは打って変わったドギツイ化粧&ブリフリブラウスのバイセクシュアル・イメージで登場のMick Jagger、これを境にSTONESのコンセプトは“悪”。わざと立小便したりドラッグやったり女取り合ったりワル&退廃のイメージづくりまっしぐら。まあ、それがハマる顔つきだったし。
実は人間的にはマトモなタイプであるCharlie Watts やBill Wymanはその顔つきだけでワルをキメることができたし、MickとKeith Richardが専門にゴシップ・スキャンダル係ってか。まあ、Mickは音楽的にBrianには頭上がらなかったし、頭の切れる計算高い男というのは今や周知の事実だから、渡りに船でひたすらガムバったに違いない。
まあ何よりの証拠には、Brian以外皆んな立派にちゃんと生きてるじゃ〜ん。死を美化するつもりもないし才能あるROCKミュージシャンは死をもって由とする、なんていうつもりも無いさ。でもね、こんな40年間ものロングランできるのはどっかで結構バランスとれてる感じしない? こないだの(2003年春)の来日武道館コンサート結構至近距離で観たけどさ、60歳にしてMickの信じられないくらい変わっていない体型、驚嘆したけど絶対天然ってあり得ねっす(すんごいストイックな生活をしていると噂)。コレ“完璧にセルフコントロールできる奴”じゃないと無理っしょ。
だからね、話が前後するけど実はBEATLESの方がよっぽどのワルだったのさ。家も育ちもよくないわ(STONESの方がいい)、ほんとの不良少年・問題児の集まりで、だけど音楽だけは死ぬほど好きだったのと、ハングリーで野望ギラギラだったさ。で、下積みの長さとダーティさといったら、1960〜62年に悪の巣窟のようなハンブルグ、麻薬と売春のうずまくライブハウスで毎日倒れるほど演奏していたんだから当然悪さもさんざんしてたさ。
 そんなこと思うと、STONESはMickは大学の経済出てるし、Keith はアートスクール出とか、ドサ周りの経験なんか無いとか思うと“坊ちゃん育ち”に思えてくるってもんだあね。
 別に私、全然STONES嫌いじゃないっすよ、だから悪口じゃあないす。ただ「横森さん、BEATLES好きだったんならいい子だったんすね」とか、「俺は(ワルだから)、STONES派っすよ」みたいな話が単純アホで「ケッ!」ってことなだけさ。
 別にね、ファッションと同じだから、STONESのワルっぽい感じがカッコいいと思って全然いいさ。でも本当にそう思ったら、それってどっから来てるのかなーって、調べたらすぐわかるもんね。で、なんだー“仕掛け”だったのか、って。で「それにしてはなかなかよくやってるじゃん!」でいいじゃん。ま、世の中ってすぐ<○○vs○○>の構造仕掛けたがるけど、つまんないことに踊らされると本質的なものを見逃すよー、ってかな。
<ブライアン・ジョーンズのカンバッジ>
これがBrian Jones、持ってるカンバッジ探してみたらSTONESのは見当たらず、唯一これだけだったって、やっぱね〜(深く考えないでいいっす)。