第五章 <「カラス族」は永遠に・・・?!> その2
  2001/8/15 update


 この話のpart2、すぐアップするようなこと言っといて、すご〜く時間がかかってしまってスミマセ〜ン! 忙しいほかにも理由がありました。いちおう私だってライターの端くれ、書いたものを発表する時には、それなりのリサーチをするさ。それでもっていろいろまわりの人に<黒のヒストリー><カラス族経験>など取材しているうち『驚愕の事実!』にぶち当たり、もう書く内容はほとんど決まっていたのに、話の内容を変えたくなったんだす。だってこの時代<カラス族>の洗礼を受けた方は多いでしょうから、いろいろ知りたいと思うんだよね、それも今も現役バリバリの"族のカシラ"(?)のことは・・・。では、その『驚愕の事実"』とはいったい何?

 じゃ、行くよー! まず<カラス族>といえば基は"コムデ"と"ワイズ"、そしてその後今さら説明の必要もないくらい世界に通用するビッグなブランドとなりました。 しかし、この両巨頭である川久保玲さんと山本耀二さんが、その昔はカップルだったったっていう話・・・、いえ、そのことが『驚愕の事実!』だったのではなくて、昔から業界レベルでは知っていて当たり前のお話が、ほんのちょっとだけ外へはみ出すと「ウッソー!!」とか「マジっすかあー?」なんて、もう『すんごいびっくりされちゃうことにびっくりした!』のでした。だってまたそのみんなの驚き方が半端じゃないんだもん。
そいでもって、いったいどのへんの年齢から、どのへんのファッション関係までが知ってるのか知らないのか、面白がってこの話の分水嶺(?)を探したりしてたもんすから・・・。結構なファッション通でも知らなかったり。ま、70年代前半〜中頃のことだと思うので、かなり古い話ですが。ま、今も世界を股にかけてご活躍のおふたりだからこそ話題になる(勝手に、ですが)ということでしょうが。

 あとね、川久保玲さんといえば、もう一般的な人からというよりクリエイティブな人からも崇めたてまつられている存在ですね。でもね、"コムデ"は最初はカワユイ、少女のイメージだったんだよー。
 これは私の長年にわたる個人的な観察・分析なのですよ。ええっと、70年の初めにデビューした頃の"コムデギャルソン"を思い出してみると"リセエンヌ"(フランスの女子高生)ってやつがテーマで、どちらかというと「地味な少女趣味」っていうか、白い衿のついたチェックのルーズなワンピースとか、ギャザースカートに麦わら帽子をかぶるとか"いなたい"印象の服の記憶があります。そして、そのもう少し後は"ペザント・ルック"(これはフランスの農婦)で、田舎なチェックでビッグシルエットとか、そんな感じでやはり素朴で"いなたい"。色は生成り色とか茶系とか紺とかのイメージ。
 反面、山本耀司氏はどうだったかというと、初期のファッション・ショーを思い出しても、あんまりイメージが今と変わらないです。昔から"都会の女"でシャープでアクティブで大胆な感じ。色は紺とか黒とか。ショー会場もコンセプチュアル・アートしてたし。

 ふたつにそのようなブランド・イメージを持っていた70年代後半のある日、"コムデ"は突然まるで天恵を受けたかのように(としか理解できなかった、私には) "攻撃的アバンギャルドな女"のイメージに変わってしまったのです! その時期は、ヨージがコンテンポラリーな女のイメージでバリバリ認められてきたのと、かのヴィヴィアン・ウエストウッドが鮮烈にパンキッシュにデビューしてきた頃とダブったりするのだがこれはシンクロニシティーか? ま、デザイナーという仕事は往々にして路線変更をすることもあるし、余儀なくさせられることもあるですが(アートじゃなくて、商品をつくっているわけだからね)、でもこのように謎な場合もあるんだよなあ・・・(独りごと)。だから80年代に結構な"コムデ"信者だった人なんかに「昔、コムデって少女趣味な服だったんだぜー」なんて話すると、これまたみんなすんごくビックリして面白いです(?)。

 でもね"コムデ"の謎な今・昔ですが、その"片鱗"がどこかしら残っているところは、いくら変わった形をしていても攻撃的でも違う意味で「少女趣味」と言えるところなの。基本的には大人の女性の身体の線を拒否しているところは「少女性」といえるし。それが証拠には今や懐かしの、でも一世風靡したブリブリてんこ盛りの「少女趣味の権化」"ピンクハウス"。私の個人的データでは、『"ピンクハウス"を着ていたことがある人がその後の時代"コムデ"を着る』という確率が非常に高い。逆に『"ピンクハウス"を着たことがない人は"コムデ"も着たことがない』(それは、私もですが、大石もそうだ)。まわりの人思い出してみると絶対いるんじゃない? ま、これって私なりの分析だけどさ、何だか言えてて面白いっしょ。

 さ〜て、前置きがたいへん長くなってしまいましたが本論です。元"カラス族"の皆様方、「浅野ゆう子さんのこと」をまさか笑って読んでいたわけじゃあないでしょうねぇ〜。
 (一瞬ゾーッとした? だってこれ"ファッション・ホラー"だかんねー)それは・・・、ただ現象面が違って出てくるだけなのですよぉ〜。例えばぁ〜・・・、

1.いちばん化粧に熱心だったはずのお年頃を"ノーメーク"で過ごしたから、いまだに化粧ができないか、またはすごヘタ。特に眉毛がいじれなかったりする。ゆえに、今の感じから見るとどうしても顔の印象が「野暮ったい」「アカ抜けない」「無造作過ぎて洗練度を感じられない」ようになりがち。結構なオトナだと「構ってない」感じから「女捨ててる」みたいにも見られたり、年行くとひたすら「老けて」そのうえ「貧乏そう」に見られる確率高し。
2.ヘアはというと、この時代の"自然志向"とも相まって、なんだかどうしてもヘアダイなど気がすすまない。"おかっぱ髪"からも変更できなかったり。まあ"ボブ"というのはタイムレスに通用する部分はあるのだが、オトナでえり足に"刈り上げ"入っちゃってたりすると今はちょっと哀しいものが・・・。ショートの場合も"刈り上げ"てて何だか今っぽくないとか。
3.そしていまだ"黒を着てれば安心"から抜け出せない。「黒」は確かにタイムレスにおしゃれな色だが、今の時代の気分としては「黒づくめ」は何とも重い、うっとおしい、で素敵には見えにくい。わかっちゃいるけど、グレーや紺などのベーシックな色止まりで、なかなかきれいな色に手が出せない。
4.なんとなく"ルーズ・シルエット"。カラス華やかなりし頃はビッグ・シルエットだった上、身体の線を拒否する服であったから、いまだにウエストをマークするのが苦手。きちんとしたブラジャーができない人もいる。スリムフィットの今、スリムでもストレートめを選んでしまう傾向だったり、と身体の線をあらわにすることに抵抗あり。
5.もひとつあったー!"アバンギャルドじゃなきゃデザインじゃないっ、ファッションしてないっ"の後遺症。デザイン・ポイントというのはそういうものなり、と、どこかそういった感じのものを"キメ"と思って選んでしまう。または、当時"コムデ""ワイズ"をすごくカッコいいと思っていて、でもそのままは過激で着られなかった、とか、買えなかった、とか、だからそういう記憶の"片鱗"デザインを選ぶ、と推測される場合もあります。これって結構中年に多いかも、それも"カルチャー系"の人っていうか。

てなことでしょうか。全部思い当たったらかなりヤバイ!けど、どれかに部分的・心理的にズキっときた人は結構いるんじゃないのぉー?!
ま、いつも言うけどこれは流行が変わる以上、これはどんどん順番でやってくることなのさ。例えば今の若い子たちだったら、ン十年後中年のオバサンになっても"シャギーなカットでブリーチ"なヘアで結構まわりからコキタナク見られてたり、やっぱヘソが出てないとパンツじゃないって、はみ出た下っ腹に"ローライズ"バリバリはいてたりするのかもしれないってこと・・・!
 だからね、いかにしなやかにおおらかに時代の変化を受け入れるという柔軟な感覚が『いつでもいつまでもおしゃれ』でいるということにたいせつなのか、わかっていだだけました? もっとしつこくわかってもらうために、今度はまた"別の話"で行くから、今まだ怖くなっていない方々・・・、楽しみに待っててねぇ〜〜ん、ヒュードロドロドロ・・・・。


次号へつづく