第四章 <“いい女ブーム”のあの人は今・・?>Part 1
  2001/2/2 update


 ええっと、このことを書くにあたって、何人かの人に「そのタイトルだったら、いったい誰のこと思い出す?」と、聞いてみました。そしたら、20代、30代、40代、の女性いずれもこれが、即答「浅野ゆう子!」だったのです。これにはビックリ!正直言って、彼女のことを書こうと思っていたのですが、ジェネレーションが違うと、知らない人もいるだろうし、ピンとこないかもしれないと思って、ちょっと事前リサーチしてみたわけ、いやー、恐ろしいもんですねぇ。

 しかし、いったいどうしてこんなことになっちゃったのか、“浅野ゆう子ルック”などといわれ、みんなこぞって真似したがった“おしゃれのカリスマ”が、なぜ今はそうでないのか? ひょっとしたら、他人事ではないかもしれませんよ〜ん。人は年をとればおしゃれでなくなるのか、はたまた他に原因はあるのか、いつまでも美しくおしゃれでいたい皆さんは知りたいですよね? じゃ、分析しながら語っちゃおう、その変化の謎と、浅野さんと私の浅からぬストーリーを。

 それは、80年代後半、私がハーフムーンというブランドのデザインを始めた頃でした。今は珍しくもなんともないけどさ、当時、レディスのマニッシュなパンツ・スーツなんか本気でつくってるとこなんか無かったのよ、もう横森自身というくらいのビシッと“超辛口スタイル”。ウケナイと思ってやったら結構ウケ始めちゃった、というくらいの時期だったわ。浅野ゆう子さんがよくショップで買ってくださるというのは聞いていて、でも何せそれまで“セクシー・アイドル”だった人じゃあありませんか。まずは「へぇー、なんで彼女がこんなそっけ無い服着るのぉ?」って感じでした。

 そのうちあちらの要望もあって、実際にお会いすることになりました。それはスタイルも良くおきれいで感じのいい方で、でも、ま、「路線変更」したいんだな、と。それについて「協力」してほしんだな、と。何回も会社にいらしては、そのたびに私に花束やお菓子を持ってきてくださったり、芸能人からそんなことされるなんて、と恐縮してましたが。  
 で、何回かコーディネートやアドバイスなどさせていただきました。ところが、その女性誌見開き10Pくらいの彼女の特集が出た時、私はもう目が点!確かに服は全部私がコーディネートした通りに着ている・・、が、しかし・・、彼女のポーズがアイドル時代そのままの「ニッコリ笑ったお約束のポーズ、ちょっとブリッ子入ってる」からだったのです。

 またある時は、ニュース番組に出てコメントするからと、“出来そうな女”のスタイリングにしてさしあげたのに、見れば「ハィ、そうですねぇ・・」なんて、膝をそろえておしとやかにお行儀良く鎮座ましまして、思わず次にお会いした時に「パンツで膝ちゃんとくっつけて座るのって、かえって不自然っすよー」とか言っちゃいましたけど。そんなこんなで、正直者の私は、彼女が私の服を着る必然性を全然理解できず、段々距離があいていってしまったのでした。ま、早い話、媚びのない服なのに、媚びた態度は合いませぬ、ってこと。

 そしたら彼女、今度は、某“S”というメーカーに行かれて、そこで大歓迎を受けたのでしょう。それから“時代を代表するいい女”として大ブレーク、そのメーカーも一緒に大ブレーク!という目出たいことになったわけです。ま、その時うちの営業の人達は「惜しいことしましたよね〜」とか、ヨダレをたらしながら言っていましたっけ。でも私としては「?」マークを抱えたまま便乗してブレークしたってしょうがないだろーが、ってことだったわけですから。

 で、浅野さんは現在もご活躍のようで、あいかわらずよいスタイルだし、おきれいだし。でも“OUT OF FASHION”っていうか、ファッション的な評価は皆無だわよね。そしてタイトルのような質問が出てくると「即答!」で名前が出てくるようになってしまったわけです。あれだけのムーブメントをつくった人なのに、ああいうトラッドテイストのベーシックファッションだったら、時間が経っても今も当然おしゃれでいられるはずなのに、「なぜ?」 というならば、残念ながら彼女が当時そのファッションに対して「本質をわかってなかった・・」というか「営業方針としてやってた・・」ということになってしまうのではないでしょうか。

 誰だって若くてきれいな時だったら、何でも似合うような気がするもの。でも、時間がたつとハズしてきちゃう。その原因は、その時代のおしゃれを取り込む時に真剣味が足りないわけなんす。「世の中の人がみんなそんな格好してたから」、「そんな格好してたらモテるから」、なんていうちゃんとした自分の基準の無さや動機が、時を経てバレバレってことになるのだす。  で、そういう風に基準がもてないと、かえって今度は次の流行が来てもどうしていいかわからなくて、変われなくなっちゃうのよね、これが。だから、“形態は残す”傾向にあって、浅野さんも頑固に昔のままのロングヘアを死守してるし、巷にもまだ意外といるのよね、前髪に上方フワリと巻きが入り、裾にパーマがあたったワンレンロングヘア、それで肩パッド入りのボデコンスーツだったり紺のブレザーだったり。けっこう銀行とかマトモな感じの会社の“お局”系に多い感じ、年は40才前後くらい、ああモロ“浅野裕子後遺症”ってわけなのだなぁ。しかしこれはもう昨今の“オバサン・パターン”の一種に分類されているというのもなかなか辛いものっすねぇ。

 あらら、もっと書きたいことが・・、ということで、この次はもっと本質に迫るべく、じゃ、今回のテーマは<Part 2>もアリってことで、よろしくです! 

補足;すいませんねぇ、浅野ゆう子さん、全然恨みは無いんすけど、でも誰にとっても“とてもわかりやすい例”なもんすから、日本女性のおしゃれ発展向上のためには、お許しくださいましー!


次号へつづく