第二章 <70'sの早過ぎたリベンジ・自分編>
  2000/11/25 update


 そもそもこのエッセイを書こうと思ったきっかけは「70'sファッションの復活」だったのでした。だって70'sをリアルタイムで生きてきた私としてはかなりツライ真剣に悩むプロセスが・・・、「どうしてっすかー? 70'sってカッコイイじゃないすかー、ウラヤましー」なんて言うんすよ、若者はさぁ。
 
でもね、一度<封印>してしまったものを解くのはコワ〜〜イィ!!ものです。絶対そういうのって年代にかかわらず誰しもあるはず、ちなみにうちのサイトの大石敦子に「過去自分がしてた格好で、絶対カムバックして欲しくないものある?」と、聞いたら「ん・・・デカい肩パッド・・・」低い声で口に出すのもいやそうに言いましたさ。そしてこのウェブ・ディレクターのHAL(♂アンド私らよりはるかに若い)にも「過去に思い出して恥ずかしい格好とは何さ?」と。「中学生の時、DCブームでワケわかんないくせにポパイとか見て“コムデ”とか“ワイズ”をガムバって着てた頃」だそう。

 そうさ誰にもあるのさそんなこと。だけどホントに70'sは「まさか?!」だったの。 それは90年代前半のこと「70年代ファッションがこれから流行る!」なんて情報がチラホラはじめは「ジョーダンでしょ?!許してよ〜」なんて笑い話にしながら半面「ホントだったらどうしよ・・・」と、胸に一抹の不安・・・。
  まさか!あのハラホロヒレハレでアホダラケた知性のカケラも感じられない悪夢のような服装が・・・、また流行るなんて・・・、正気の沙汰とは思えない!!
  でもね、こういう情報は必ずしも具体化するとは限らないし、面白がるだけでFASHIONではなく”FAD”(ちょっと珍しがる一時的な現象)かもね、ま、レニー・クラビッツなんてまんま70'sの申し子みたいな格好でデビューしてるけどあれはパフォーマーだから別だし・・・、なんて、もう頭グルグル、とにかく本当でないことをひたすら願ってたのでした。

 だってさ単純にヤバイのは「70'sからず〜〜〜っとそのまま同じ格好で棲息している人がいる」ってことだす・・・。東京は中央線沿線あたりのスナックやライブハウス関係者とか長年マイペースのカメラマンやミュージシャンとか・・・。今までひたすらそれなりのカッコよさを追求してきたデザイナーという職業の私がですねえ、ここで70'sやったら今まで忌み嫌っていた(?)そういう方々のお仲間になっちゃうじゃないかー!! 振り出しに戻れってかー?! いったい今まで磨いたセンスや努力と積み重ねは何だったのだ・・・、お願いだから許してよー!(と、これが最大の恐怖)
  今でこそサイクルが完全に一周してるからそういう人達がカッコよく見えることも世間ではあるらしいけど(若者から見たらバリバリのホンモノ!)、でもここまで来るには、ン十ン年もやっぱり”ヘンな人”だったわけじゃない?

 「流行は繰り返す」というのはそりゃー昔から言われてましたわ。母がよく私がデザインした服を見て「私が若い頃に着ていた服だわ〜。(事実、母は大正生まれのモダンなセンス、当時はまだ珍しい辛口タイプ、マニッシュなテーラード・スーツが好きだった)流行って繰り返すのねぇ。」なんて懐かしそうに言うのを「ふんふん。まあまるで同じということはないけど、そんな感じあるかもね。」なんてたいして気にも留めず。 で、母の若い頃=40年代、この時の私=80年代、だから<約40年の周回時差(?)>。もし何か「繰り返す」ようなことがあっても「まあ、それは私が現役で仕事をしているうちじゃないわよね」なんてはるか彼方のことと思ってたし。

 その後約10年、バブルから不況までで時の流れが一気に加速、ファッション・トレンド周回時差も一気に縮まり「90年代に70年代ファッションが復活」で、いきなり<周回時差約20年>という現象が実際起こってしまったのですから、もう”晴天の霹靂”で”恐怖の大魔王”。「ちょっとオーバーじゃないのぉー?」って言う?  
  でもさ、それまではいろいろなトレンドも自分なりに料理しこなして来て、次のそのトレンドを受け入れられるかどうかって「デザイナー生命および方向性」を左右する”踏絵”みたいなもんじゃない? 歴史が繰り返すのを目の当たりにして、初めて「長く生きてしまったものだ・・・」と思ってしまいました。

 今はそれからかなり時間もたって喉元とっくに過ぎ、悩んだことなど忘れたように消化吸収しちまい(最近の横森、面白がって堂々の70's
・・・、コワイもんすねー!?)冷静にこうして文章にもしたためられるようになったわけですが。
  さて、この次は? あの有名なユナイテッドアローズの栗野氏が何かで言ってましたとさ「これからは15年前が新しい!」と、あのケバくてバブリーでリキ入ってる物質主義の80'sですよ。あ〜ら、あつこさん「恐怖のデカ肩パッド」はちょうどその頃だったわね〜ん? ねえ、HALだって恥ずかしいの15年前じゃん? さあ、これからは「皆さんもご一緒にぃ〜〜い」冷や汗タラ〜リ脂汗ジワ〜リで迫り来る恐怖を味わいましょうね〜ん♪♪

補足;70'sファッションの極め付け映画だったら「ラリー・フリント」(数年前のアメリカ映画、シネマライズで見ました。コートニー・ラブがこれで女優デビューした)がおすすめ。特にメンズファッションがイカレポンチに派手で素晴らしく(!?)、あまりの堂々さに段々カッコ良く見えてくる。私は内容的にも面白かったけれど、あまりウケなかったそう。



次号へつづく